AI-DLCとは

AIとの協働を前提に、開発の工程を組み立てる方法論です。

AI-DLCはAI-Driven Development Life Cycle(AI駆動開発ライフサイクル)の略です。以下、なぜ必要なのか、どう組み立てるのか、当社が何を提供しているかの順に説明します。

速く書けることは、速く届くことではない

AIにコードを書かせること自体は、すでに多くのチームがやっています。書く速度はもう問題ではありません。

問題はその先で起きています。

書く量と読む量の差。AIが書く量は右肩上がりに増える一方、人が読んで判断できる量はほとんど変わりません。開いた差が、誰も判断しないまま通っていく成果物になります。量AIを使うほど →AIが書く量人が読める量判断されずに通っていく分比率は模式的なものです。実際の量を示すものではありません。
書く速度は上がりましたが、読んで判断する速度は上がっていません。この差が埋まらないまま増え続けます。

書ける量の限界が、歯止めだった

人が書いていた頃は、おかしな方針のまま進んでも、気づく前に作れる量には限りがありました。

歯止めが外れても、読む速度は変わらない

曖昧な指示から曖昧なものが大量に出てきます。それを読んで判断する人の時間は増えません。動いたかどうかしか見なくなります。

差を埋める基準が、チームにない

何を通して何を戻すかが揃っていなければ、レビューする人によって結論が変わります。個人がツールを使いこなす話に留まる限り、成果はその人がいるかどうかで決まります。

だから、AIをどう使うかより先に、誰が何を判断するのかを決める必要があります。AI-DLCが扱っているのはそこです。

役割を入れ替える

役割の入れ替わり。これまでは人がコードを書き、人が確かめていました。AI-DLCではAIが書き、人はそれを読んで通すか戻すかを決めます。人の時間は書く作業から判断へ移ります。これまで人が書く手を動かす人が確かめる読むAI-DLCAIが書く手を動かす人が読んで決める判断する濃い青が、人が時間を使うところ
人の仕事が無くなるのではなく、書く作業から判断へ移ります。読んで決める時間はむしろ増えます。

これまでは人がコードを書き、書いた人が確かめていました。AI-DLCではAIが書き、人はそれを読んで通すか戻すかを決めます。

人の仕事が減るわけではありません。書く時間は減りますが、読んで判断する時間は増えます。ここを軽く見ると、AIが出したものをそのまま取り込むだけになります。

工程ごとに止める

AI-DLCの3つのフェーズ。Inception(構想・要求)、Construction(設計・実装)、Operations(運用)の順に進みます。各フェーズでAIが成果物を作り、人が承認ゲートで通すか差し戻すかを決めてから次へ進みます。AIが成果物を作る人が通すか戻すかを決めるInception構想・要求事業の意図を要求へ承認ゲート人が読んで決めるConstruction設計・実装アーキテクチャ・モデル・コード・テスト承認ゲート人が読んで決めるOperations運用コードとしての基盤・デプロイ承認ゲート人が読んで決める実線は成果物を出す流れ、破線は差し戻してやり直す流れ
フェーズごとに人が判断します。通れば次へ、通らなければやり直します。まとめて最後に確認するのではありません。運用まで同じ枠組みで扱います。

構想・要求、設計、実装、検証と進みます。各工程でAIが成果物を作り、人が承認ゲートで通すか差し戻すかを決めてから次へ進みます。

最後にまとめて確認するのではありません。手前の工程が曖昧なまま先へ進むと、その曖昧さを含んだ成果物が次々に積み上がります。止める場所を工程ごとに置くのは、手戻りを小さいうちに見つけるためです。

承認ゲートで何を見るかを決める

承認ゲートの流れ。AIが成果物を作り、人が読み、承認ゲートで通すか差し戻すかを決めます。差し戻された場合はAIが作り直します。AIが作る設計案・コード人が読む内容を確かめる承認ゲート通すか、戻すか次の工程へ承認された成果物差し戻し濃い青が、人が担うところ
AIが作り、人が読んで判断する。通れば次へ、通らなければ作り直す。この往復が承認ゲートです。

承認ゲートは「動いたかどうか」を見る場所ではありません。求めたものになっているか、決めた境界やルールを守っているかを見ます。

この判断ができるかどうかが、AI-DLCが機能するかの分かれ目です。基準がチームで揃っていなければ、承認ゲートは通過印を押すだけの手続きになります。

判断の基準を、設計として言葉にする

承認ゲートで判断するには、判断の根拠が要ります。根拠が個人の感覚なら、揃えようがありません。

業務の概念や責務の境界が決まっていれば、AIの成果物をその基準で確かめられます。ドメイン駆動設計(DDD)のように業務の知識を設計の中心に置く考え方が効いてくるのはここです。

境界とルールを言葉にしておけば、型や契約やアーキテクチャテストに落として、逸脱を機械的に検知できます。人が読んで判断する部分を、本当に人でなければ判断できないことに絞れます。

基準を仕様という形で持つやり方もあります。仕様駆動開発です。何を作りどう動けばよいかを先に書き、それをAIへの指示と、出てきたものの確認に使います。AI-DLCとは別の系譜から来た考え方ですが、承認ゲートが必要とする判断の根拠を用意するという点では同じ役割を果たします。

仕様駆動開発だけを先に取り入れることもできます。ただし仕様を書いても、誰がどこで確認するかを決めていなければ、判断は人によって変わったままです。

提唱者が述べていること

AI-DLCという方法論についての公開された発言です。当社への評価ではありません。

AIは詳細な作業計画を体系的に作成し、能動的に確認と指示を求め、重要な判断は人間に委ねる。

AI systematically creates detailed work plans, actively seeks clarification and guidance, and defers critical decisions to humans.

Raja SP(AWS)/Introducing AI-Driven Development Life Cycle(AWS DevOps Blog、2025年7月31日)

方法論として整っていることと、自分たちのチームで機能することは別です。当社の診断は、この差を実際のリポジトリと開発文書から確かめるものです。

当社が提供していること

現状を評価したい場合はAI駆動開発 導入・改善診断、進め方をチームで身につけたい場合はAI駆動開発 実践ハンズオン、決めた計画を実行したい場合はAI駆動開発 導入・定着支援があります。

具体的な工程や操作方法は、使用するワークフローのバージョンによって異なります。診断ではawslabs/aidlc-workflowsを標準として分析します。

AWSによる記事と公式リポジトリ

AI-DLCについて、AWSが公開している記事とリポジトリです。バージョンを問わず、原典と実践事例を集めています。

方法論そのもの

  • Introducing the AI-Driven Development Life Cycle ── Raja SP(AWS)、2025年7月31日。Inception・Construction・Operationsの3フェーズを提示した原典
  • Building with AI-DLC using Amazon Q Developer ── Will Matos ほか(AWS)、2025年11月29日。ツールと組み合わせた進め方
  • awslabs/aidlc-workflows ── 公式のワークフロー実装。初期化から運用までの5フェーズ33ステージ、承認ゲート、監査証跡を含む
  • AI-DLC Documentation ── 上記リポジトリの公式ドキュメント。導入手順、基本概念、日常の使い方、エージェントの解説、開発者向けの技術仕様まで揃っている

実践事例

リンク先は当社の管理下にありません。内容は各サイトでご確認ください。

自分たちの開発はどうか、確かめる

AI駆動開発の品質と安全性を2週間で診断し、次の90日で取り組むことを整理します。

AI駆動開発 導入・改善診断を見る

チームで実践して学ぶハンズオンもあります